チェコの人形劇をご存知ですか?とってもグロテスクな木彫りのマリオネットで演じられる風刺的な劇です。日本人の英語学習熱に水を差したいわけではないですが、母国語について少し考えをめぐらせてみるきっかけになるかもしれない小ネタです。
チェコといえばウィーンと並ぶ音楽の都、そしてピルスナーで有名なビールの発祥地、またサッカーの強豪として知られている歴史ある国です。
そのチェコで、チェコ語を使ってはならない時代が長くありました。
プロテスタントとカトリックとの宗教対立から始まった三十年戦争(1618年~1648年)においてチェコはハプスブルク家のボヘミア王位(つまりウィーン王朝)の絶対王政下に支配されるとになり、公用語はドイツ語とされチェコ語の使用は禁止されました。
言語とはまさに文化そのものの体系ですから、それとともにチェコは独自の文化を失っていき、ドイツ化を進められていきました。
その後第一次世界大戦後にいったんはチェコスロバキア共和国が独立しましたが、1939年、再びナチス・ドイツの保護領となりドイツ化。
チェコは「暗黒の時代」と呼ばれる時代を長く余儀なくされてきました。
しかしこの暗黒の中、チェコの民衆や知識人はただ黙ってドイツ化に迎合した訳ではありませんでした。
公の場ではチェコ語の使用を禁止されていましたが、唯一、人形劇の中だけはチェコ語の使用が許されていました。
チェコの文化を守ろうとする人々は、人形劇の世界に自分たちの言葉とともにチェコの文化を託し、決して暗く沈むことなく、笑いと風刺に満ちた人形劇でチェコの文化を子ども達に継承していったのでした。
さて私たち日本人は、幸いにも自国語を奪われてはいません。
その分、自国語をあえて大切にしようという意識も低いのかもしれません。
しかし周知のとおり、かつて戦時下において日本は朝鮮と台湾に日本語教育を強制し、政策として文化的植民地化を行おうとした歴史を持っています。
自国の文化や言語を愛することは、他の国が同様にそれぞれの文化や言語を大切にすることの大切さを認識することにもつながるのではないでしょうか。
世界で最も使用する人口の多い英語は、確かにそうなった理由があるのだと思います(文法構造がシステマティックであり例外が少ない、発音依存型言語でなく表記依存型である、つまりドイツ語におけるウムラウトやフランス語のアクサンなどを用いなくとも26文字のアルファベットの組み合わせだけで表現できるなど)。
そのような利点に対し学ぶべき点は何なのか、また自国の言語にはどのような良さがあるか、…
英語を学ぶことで自国語のすばらしさ、自国文化、自国の言語のすばらしさを再確認できればこそ、英語学習の本当の意義が見えてくえるのかもしれません。
英語文化のマリオネットにならないように気をつけたいものです。
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