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まねるな、危険!?十数ヶ国語を数年でマスターした、考古学者シュリーマンの方法

< 役立つ小ネタ
投稿者 三好淳一 2007年07月24日 09:55

今回は十数ヶ国語に及ぶ語学の習得により貿易商として事業に成功し、それで得た巨万の富をすべて投じて世界史を覆すような大発見を成し遂げたといわるシュリーマンを採り上げます。
彼は、いったいどんな方法で語学を習得して行ったのでしょうか?
また、そこから私たちは語学を学ぶためにどんなヒントを得ることができるでしょうか?


ハインリッヒ・シュリーマン(Heinrich Schliemann, 1822年1月6日 - 1890年12月26日)は、ドイツの考古学者。ギリシャ神話に出てくる伝説の都市トロイアが実在することを発掘によって証明した。彼は、発掘調査費を自弁するために、貿易などの事業に奔走しつつ、「イーリアス」の研究と、語学にいそしんだ。彼は「イーリアス」を読み込んだ結果、トロイア城はヒサルリクの丘にあると推定し、調査を続けた結果、同地に遺跡を発見した。この発見により、古代ギリシアの前史時代の研究が大いに進むきっかけとなった。(Wikipediaの項目「ハインリッヒ・シュリーマン」 より)
シュリーマンはその著『古代への情熱』の中で、貿易商として成功する上でほんの数年間のうちに10ヶ国語以上の言語に通じたことが大いに役立ったことを述べています。そんなにたくさんの言語を短期間にどうやってマスターしたのでしょうか? 同著内で語られている彼の学習方法をまとめると以下のようになります。
「毎日、1~2時間、できるだけ大きな声を出して本を一冊音読し、暗唱してしまう」 具体的には

1.非常に多く音読すること。

2. 決して翻訳しないこと。

3. 常に興味ある対象について作文を書くこと。

4. これを教師の指導によって訂正すること。

5. 前日直されたものを暗記して、つぎの時間に暗誦すること。

これによって彼は英語とフランス語をそれぞれわずか半年で、オランダ語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、をそれぞれ6週間でマスター。その他スウェーデン語、ギリシア語、ラテン語、ロシア語、アラビア語、トルコ語などもごく短時間に習得していったそうです。
彼の記憶術もすさまじいもので、かなりの長編でもその国の言葉で完璧に暗誦することができたそうです。
よく彼を賞賛する記述の中に、古代への情熱があったからこそできた→だからあなたも情熱を持って勉強せよ!というような文言を見受けます。
さらにそれが企業のコマーシャルになると「語学学習での大事なことは、とにかくその国の人になったかのように翻訳せずに読み進めることです。」→「当社の教材はまさにネイティブになったつもりで学んでいくすばらしいものです…」
という具合に格言+セールス文句へとすぐに結論付けられてしまいがちですが、…さてシュリーマン型学習法は本当にまねすべきなのでしょうか?まね出来るのでしょうか?

結論としてはシュリーマンのまねはできない、すべきではない、と言うべきでしょう。それは以下のような理由からです。

(1)記述の信憑性に疑問
実は近年、偉人シュリーマン像は研究により大きく変化してきているところがあります。
子どものころから親しんできたギリシャ神話の伝説の都市トロイアを実在すると信じ込み、その夢を何十年もかけて成し遂げた、そんなロマンあふれる偉人伝は、本人による脚色がかなり入っていたことがわかってきたそうです。
実際の彼は古代文明などにはほとんど興味がなく、貿易事業に邁進していたそうです。
ところがあるとき30歳も年下の教養ある妻と結婚して、彼女に対して見栄を張るために「自分は若いころからこんなロマンを抱いていた男だ」と思わせたくてでっちあげた作り話だったことが指摘されています(もちろんそのために貿易事業をたたみ実際に発掘をした点は偉大なことです)。

(2)日本人に可能か?
私はこのシュリーマンの語学習得の逸話を高校のときの恩師に教わったのですが、その時に恩師がこんなことを注釈しておられました。
ヨーロッパの言語や中国語、ヒンドゥー語などは文法的に構造をが似ており、またヨーロッパ言語に関しては発音の点でも、フランス語、ロシア語を除けばほぼ大きな違いがなく発音できる、また文字の並びからおよその語義も類推できる。
つまりヨーロッパで1つの言語に通じていればわれわれの想像以上に容易に他国の言語に応用が利く、ということでした。
ドイツ語を母語にしていたシュリーマンだからこそ成し遂げられたことであり、英語を学びたい一般の日本人が同じことを同じ速度でやるのはとうてい不可能です。

では日本人が外国語を短時間で習得するにはどうすればよいのか…?
まずは誰かの方法をまねようとするのではなく、自分に本当に合った学習方法を見つけようとする眼を持つことが大切なのではないでしょうか。
シュリーマンも自分で独自の学習方法を模索したからこそ、誰よりも早く語学をものにできたのです。
日本人には日本人に合った、そしてあなたにはあなたに合った学習方法きっとあるはずです。
そのあたりはジョン万次郎や江戸時代の蘭学者に学ぶほうがひょっとしたらよいヒントがあるのかもしれません(またの機会に改めたいと思います)。
うっかり人のまねをしていたら、あなたの大切な時間をむだにしてしまう危険もあります。

広い視野をもって柔軟に貪欲に学習に臨む事で、方法なんておのずと見つかってくるのかもしれません。

筆者はシュリーマンの情熱からそんなことを学んで役立てていくつもりです。

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